挑戦と修正力

経験豊かなチャンピオンに若い挑戦者が挑むあるボクシングの試合を解説する動画で、修正する能力の大切さが強調されていました。挑戦者はスピード自慢で、高速で連打を打てる攻撃型の選手です。チャンピオンは防御が巧みで、パンチを打たれない、或いは打たれてもダメージを受けない態勢を取るのが上手で、相手の攻撃の合間にカウンターパンチを入れるのが得意な選手です。

第1ラウンドの開始早々、挑戦者のスピードのある切れのあるワンツーパンチが、チャンピオンを捉え、チャンピオンの頭を跳ね上げます。これで自信を持った挑戦者がどんどんパンチを出しますが、チャンピオンは徐々に挑戦者のスピードに慣れ、パンチをもらわなくなり、挑戦者の打ち終わりにカウンターを的確に入れるようになります。

第1ラウンドが終わって、自陣コーナーに戻った挑戦者がセコンドに「このラウンドは取った!」と言うと、セコンドは「いや取られた」と答えます。挑戦者は最初に当てたパンチの手応えが良かったので、攻撃に集中し、ラウンドの後半で自分が打たれていることに、あまり氣付けなかったようです。

セコンドの判定予想を聞いた挑戦者は、「もっと攻めないといけない」と思ったそうです。攻撃力で勝ち上がってきた選手が、このように考えるのは当然かもしれません。しかし、攻めてばかりですと防御が手薄になり、カウンタパンチャーにより多くの“すき”を見せることになります。

より攻撃重視に舵をきった挑戦者は、その後も、パンチとパンチの合間にカウンターパンチを浴び続け、パンチ力があるとは見られていないチャンピオンにKOされてしまいます。自分はそこそこ打たれ強いと考えていた挑戦者と、挑戦者陣営は大変なショックだったようです。

最初のラウンド後にセコンドと意見交換したときに、挑戦者が「思ったより良いパンチをたくさんもらっていたんだな。もっと慎重に戦おう」と考えれば、結果は違っていたかもしれないと解説動画は言っていました。

攻撃メインで勝ってきた人間が、急に守りに意識を向けるのは難しいでしょうし、やろうとしてもどうしたら良いか分からないでしょう。本来なら、攻撃重視モード・カウンター警戒モード・足を使ってアウトボクシングモードなどの幾つかの作戦を事前に用意しておき、試合の経過を見て、どの作戦を採用するかをセコンドが指示するのが良いのでしょうが、若いこともあり、さほど引き出しも多くなかったのかも知れません。

このように考えると、修正力とは事前にしっかりと準備し、本番では状況を正確に判断して、用意したどの手法が最善かを選択する力であると思います。

ボクシングは明暗がはっきり分かれるので、負けたら反省点がはっきりしていて、対応策を講じやすいです。でも、普通の仕事や実生活ではワンパターン化していても、それなりにこなせてしまうことが多く、修正改善すべきところを放置して成長の機会を見過ごしていることが非常に多いと思います。50を過ぎると、皆そのような傾向が強いのではないでしょうか?

俯瞰的に自分とその周囲を見て、惰性に流されずに問題点や新しいことに挑戦していかないと、成長がなくて楽しくありません。成長が止まれば、神様が「もう今生の仕事が終わったね」とお召しになるでしょう。

無理はいけませんが、いくつになっても挑戦するのは楽しいことです。強気でありつつも慎重に挑戦し、もっともっと人生を楽しみたいです。

あみんこと網野忠文

氣付き

Posted by amin_itsu