MSA (Mutual Security Act :相互安全保障法)

2022年7月30日

「世界を統べる者」という本を読みました。

東大医学部名誉教授の矢作直樹先生と国際実務家の宮澤信一氏の対談本です。国際実務家は耳慣れない肩書きですが、条約に則り、日米間の調整をされているよう方のようです。宮澤氏は、守秘義務のために詳しい内容は明かせないけれども、我々国民に日米関係を正しく理解してもらうため、ギリギリまでお話くださったようです。

「日本史用語集」には以下のようにMSA協定が説明されています。

MSA協定とは1954年に日米間で調印された協定で、アメリカの相互安全保障法により、日本が経済援助を受ける代わりに、日本が防衛力を漸増するよう定めたもの。農産物購入協定・経済措置協定・投資保証協定と合わせてMSA4協定と呼ばれる。

このような説明を受けますと、敗戦後の戦後復興のために、米国と取り決めた一時的な協定だろうと想像します。

ところが、MSA協定は日米関係の根幹を規定する条約であり、日本国憲法の上位法であるとのことです。安全保障に直結することですので、MSA協定の詳細は表に出ておらず、最近の総理でさえも、MSAを正しく理解していないとのことです。下の文章は、MSA協定の最も重要な理念を表す条文です。

『日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意する』

簡単に言えば、「日米両国の経済的発展、世界特に極東の平和のために、密に連携していきましょう」と言うことです。この条文に「個別的又は集団的自衛の固有の権利を有する」とあります。日本国憲法になんと書いていようと、上位法が自衛権を明確に規定している以上、自衛権はあります。

そもそも憲法九条は、ソ連・中国・イギリスなどによって構成される極東委員会が、日本が二度と立ち上がれないよう分割統治しようとしていたのを、「憲法九条で再軍備できないように縛るから、日本をそのまま残そう」と、極東委員会を説得するために米国が作成したものです。今となってはなんの意味もなく、九条が足かせとなって本来の日本の役割が果たせないのなら、速やかに改正すべきです。77年間も放置していた憲法を今更変えられないのであれば、MSA協定や国連憲章の上位法に基づいて自衛を行使するのがいいだろうと、書かれています。

MSA協定では戦後日本の安全保障・経済・産業の在り方の大枠が決められていて、例えばMSA協定をいじらずに農地改革を議論してもただの空論になるとのことです。日本で勝手なことをされると米国にとって不利益になるかもしれないじゃないか!って米国に怒られるわけです。

日本が米国の産業を支え、米ドルを買い支える代わりに、米国は兵器を日本に供給し、日本の防衛のために米国の兵員の血を流す覚悟でいる。これがMSA協定の骨子です。

日銀が日本円を刷る場合でも、MSA協定の定めにより刷ったお金の10%を米国に納めないといけないそうです。

産業構造を決められ、刷った日本円の一部を米国に払わないといけない。腹立たしいですが、そのおかけで我々は平和ぼけできたのです。しかし、日本共産党の幹部が言うように「憲法九条があるから、日本は隣国から攻められないんだ」とはあまりに頭の中がお花畑です。天敵が来たら砂の中に頭を隠すダチョウと同じです。

圧倒的に戦力の勝る米国が、尖閣諸島周辺で堂々と領海侵犯を冒す中国船を追い払わないのは、日本にお灸を据えるためとか。「お前達も血を流す覚悟をしろ」と。

平和維持のために軍備を揃えるにはお金が掛かります。そのお金をどう稼ぎ、どう防衛負担をするかを詳細に規定しているのがMSAだとか。確かに日本が勝手に産業構造を決めることはできなさそうです。でも米国経済を支えているのが日本であるのは間違いなく、両国は対等な関係であり、シャム双生児のように切っても切れない関係になっていると矢作先生も宮澤氏も仰っています。

今の米政府は国際金融資本家の指示で動いており、日本は米政府の言いなりに日本の富と国益を米国に垂れ流しているように見えています。

しかし、これは日本の問題であり、交渉にあたり自国の国益を考えずに相手国の言いなりにしていれば、当然相手国はずうずうしい主張を押し通し、ほくそ笑んでいるでしょう。MSA協定があるのはあるでいいですが、その上で自国の利益と未来を守るつもりがなければ、国は滅びます。

政治家が考えていないと非難するのは簡単ですが、実は政治家は我々の映し鏡です。我々が与えられた情報を吟味せずに仕方無いことと受け入れ、改善方法を考えていないことが日本の政治にも顕れています。そろそろ本気にならないとね。

あみんこと網野忠文

政治経済

Posted by amin_itsu